Write to Do the Right Thing

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Why They Are There 対策本が果たすべき役割とは

 昔,外国語辞書をつくっている人がこんなことを云っていました.「私たちの仕事というのは目の前にある砂山を崩して,ふるいにかける,そしてまた同じ砂山をつくるようなものなのだ」

新しい辞書を作るに当たっては,過去の辞書からデータを作っていきます.それは,その辞書の前身にあたる同社の辞書かもしれないし,他の国内の辞書かもしれないし,海外の辞書かもしれません.ただ,古い情報を入れてもしょうがないので,そういうのはデータを集める段階で落とすはずです.その後,辞書編集プロジェクト内で集めた独自のデータベースがあったり,ゲラに執筆担当先生による赤字が入ったりしていきます.ただ,多くの場合,恐れずに云えば,初めに新しくする上で意図的に捨てた情報と対して変わらないものが出来上がっていきます.それでも,いままで存在した辞書よりも全体でよくなって感じられればそれでいいことなのでしょう.

で,この「砂山を崩して別の砂山をつくる」という比喩はTOEICなどの資格試験対策書をつくる上でも云えるのではないかと思います.

というのは,TOEICなら『TOEIC公式問題集』を除いて,すべての市販の対策書はこの公式本および実際に試験を受けた上で集めたデータに基づいて作られるからです.まったくそういうのを見ないで作るという選択肢もありますが,最近そういう本は減ってきました.

当然のことながら,人によっては所詮公式を見ながら作った本だから,劣化コピーに過ぎない,公式本だけが信用できてやるべき,という人もいます.実際,自分で対策本を書いている人でさえそうしういう人がいます.それはそれで解るような気がします.きれいにできた砂山があるのに,壊して同じ材料で作った砂山が前よりきれいになることのほうが難しいという判断でしょう.

さて,ここで市販の対策本に価値をどうすればだせるのか,というのを教材をつくる立場から考えてみたいと思います.

❶公式本に入っていない著者の受験体験による情報が入っている

英検の場合は当てはまりませんが,TOEICなどの標準試験の多くは試験は持ち帰り禁止で,問題は公開されていません.だから,受験を重ねてどういう問題がよくでるのか,公式本には載っていない要素を含めて試験に詳しくなってそれを本に入れるという方法があります.

❷独自の分析や解説などを入れる

問題自身はそれほど公式と同じか,それより質が少し落ちるものしかつくれないが,解説を詳しくして使いやすいものにしたり,試験に対する分析を入れ,攻略の仕方を提示したり,あるいはテーマごとに更生したりすることで学習しやすくする,ということも可能です.

よいとされている対策本は大概❶❷のいずれか,もしくは両方をしているはずです.ただ,ぼく個人に関して云えば,頭には入れているけれども,それほど重視していません.というのは,この要素の出来の良さを競ってもハードルがやたらと高くなるだけです.

そこで,いろいろ考えたのが,

❸ターゲットの学習者を設定し,内容を彼らにアレンジする

ことです.学習者のレヴェルに応じて,英語を易しくしたり,難しくしたり,必要と思われる知識を詰め込み,さらに覚えられるような仕掛けをつくったり,…他の人が❶❷を争うのを横目で見ながら❸に力を入れることにしています.

もちろん,最近出たTOEIC対策本もこの❸の部分でできることを意識して作りました.

CD付 TOEIC(R)テストおまかせ730点!

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 そっくり問題をつくるのも大事ですが,それよりも730点を受ける上でちょうどよい文構造や語彙をなるべく入れることを心がけ,かつテクニックよりも英語の説明を多くする感じにしました.まあ,テクニックを書くのはどちらかというと苦手なので.とにかう,少し売れ行きが芳しくないようなので,もう少し売れてくれるといいな,と思います.