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Write to Do the Right Thing

I create things and write about them here as well as other stuff. Views are always mine.

Trying something I don't usually do. あまり書かないことを書いてみます

 

Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage

Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage

 

 去年の夏,この本を読みました.村上春樹の最近の著作は質が落ちているがこれは違う,と云われていたのですが,この本は良かった,とアメリカ人の文学好きの友達が云っていたので,何気なく本屋さんでこの本を取り,読み始めて,そしてはまりました.

ぼく自身は決して村上春樹のファンではありません.話題になった『1Q84』をオーディオブックで聴いてなんだかなあ,と思った程度です.昔の本も2冊ぐらいしか読んでいません.

ただ,この本は優れた小説に絶対になければいけない条件の多くを満たしています.ぼくは英語で読みましたが,優れたnarrativeやstorytellingを考える上でも参考になるので,筋を明かしてしまうことを恐れずにここに書いてみます.

まず,プロット(あらすじ)がよく練られています.全体を通じての大きな柱は主人公が属していた友達グループからある日突然外された謎を解決することです.この意味でこの小説はミステリーと捉えることもできます.

そして,この筋を捉える上での,伏線となるエピソードや細かい描写が巧みです.主人公が見る性的な夢が,後の方で明かされる謎の解答の暗示になっています.

そして,書き手だとやりがちな主人公Tsukuru Tazakiの心情を徒(いたずら)に書かない,彼の行動という事実描写と物語の流れから読者に感じさせる書きっぷりが巧いな,と思わせます.

何より,ある出来事が,人の人生の流れを決定していく,しかし,それは必ずしも人生を消滅させたり,誕生させたりするようなものではなく,その出来事があっても,各々の日常そのものという時間は誰にとっても平等に流れていく,そのことの辛くて,美しいさまをきっちりと素朴に書いている部分が泣かせます.ぼくは文学はよく解らないけれどもおそらく村上春樹の小説は全部こんな感じですが,それがうまくこのストーリーにはまっている気がしました.

ちょっと硬いかな,と感じましたが,英訳はなかなか見事です.日本語のようにすいすい読めました(というか,日本人の作品なんだけど).