Write to Do the Right Thing

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They are not magicians. ディスコースマーカーの魔法が解けるのはいつか

 先ほどまで,こんど出す本のゲラをチェックしていました.ものすごく英語が苦手な人のためのライティングの本です.英語がまあまあできるという人にはもっといい本がたくさんあります.『即戦力がつく英文ライティング』とか.TOEFLを目指しているなら『新版TOEFL TEST対策iBTライティング』がいい本です.

今回の本はそのレヴェルの読者はいっさいターゲットにしていません.センテンスは問題なく書けるけれども,「つながり(cohesion)」「まとまり(coherence)」が,と考えている人はがっかりさせると思うので,買っていただくのはうれしいですがその面はあまり期待しないでください(というかそこに関心がある人は最近は書店にあまり置いてなくなった『 論理を学び表現力を養う 英語スピーキングルールブック  』をご笑覧いただいたほうが良いと思います).「この2つのセンテンスのつながりは少しゆるいかも.でも,学習者が実現可能な例としてはこのくらいがギリギリだし…」という例も多々あります.正直,個人的には初級者はリスニングやスピーキングに時間を割いた方がいいと思っているのですが,いろいろ共著者の意思や昨今の風潮(かつてよりやや下のレヴェルの資格対策用の英作文問題集などが売れているようです)などもあり,そういう従来よりもぐっとに向けたライティング本を世に出すことになりました.

ネイティブなら小学生でも知っている会話の基本ルール

ネイティブなら小学生でも知っている会話の基本ルール

 

 繰り返しますが,上(↑)よりもっとずっとやさしい,いかにしょぼい小道具を使い,しょぼい英語をつなげていってなんとか意味を通じさせるか,という本です.しかし,今回のゲラをチェックしながらひとつ気づいたことがあります.ライティングに限らず,英語で表現することに関して,多くの学習者はなにか正解を求めているんですよね.で,それに答える形で,ひとつの案を知識を伝達する側が出してあげるとそれを喜んで使います.で,そこまではいいのですが,それがへんな形で形骸化したり,その解決策の使用が本来なかった意図を帯び始めるということです.

ひとつはディスコースマーカーの使用です.ぼくは正直あまり重視していません.ライティングだけじゃなくてリーディングの指導でもこういうのに過剰に頼るのはなんか違うのではと考えています.ところで,ディスコースマーカーというのはなんだか大学受験の長文読解を教える先生が生み出した言葉のように思う人もいるかもしれませんが,Deborah Schiffrinというアメリカ人の学者がまとめたときは,会話で使われるものが多かったと思うのですが,いつのまにかこれはpragmatic markersなどと呼ばれるようになってきました.まあ,それは置きましょう.大事なのは,これは名が示すごとくmarkerであり,「ここにこういう内容のことが来ますよ」と聴き手・読み手に知らせるのが役割です.

Discourse Markers (Studies in Interactional Sociolinguistics)

Discourse Markers (Studies in Interactional Sociolinguistics)

 

でも,多くの学習者はこのディスコースマーカーを使うとそのあとに続く内容が変わると思っているようなんですよね.はっきり書いて置きますが,それはありません.ディスコースマーカーは前後の英文の意味を変えたりはしません.というか,ディスコースマーカーはなくても他の部分が正しい流れで書けていれば少し読みにくいというだけのことで意味が通じるわけです.

 で,このことは基礎中の基礎のように勝手に指導者側(知識を伝達する側)は思っているのですが,いや,かならずしも初級者にとってはそうではないし,なにか彼らを誤解させているのはもしかするとこちら側にあるのではないか,ということです.で,今度の本がそういう誤解を与えなければ,というのを切に望んでいます.