Write to Do the Right Thing

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二兎を追わないものは一兎も得ず -英語学習における目標の設定の重要性-

英語学習者にとって,目標があり,それを効率的に達成しようとするのは当然のことです.しかし,巷(ちまた)に効率的と云われる方法が本当に効率的なのでしょうか.実は,一見効率的に見える方法が,ものすごい学習効率を妨げているのではないか,という話をします. 少し抽象的でピンとこないですか.それでは,具体的な例を出しましょう. 現在,TOEICのスコアを英語学習の目標にしている人って多いですよね.なぜ,TOEICのスコアを英語学習の目標にするかはさまざまです.単に,英語力を測る基準にしている人もいれば,高い点数のスコアがどうしても必要な人もいるでしょう.さて,後者の場合,「本当の意味の英語力はつかなくてもいいから,スコアをアップさせたい」と思っている人がいるかもしれません.しかし,「スコアアップするための勉強法」としてポピュラーなものというのは本当に効果があるのでしょうか. TOEICは試験ですから,当然,間違いを誘う「引っ掛け」は多少施されています.そのカラクリについて知っていると正解できるような気がしますが,よーく考えてみると,「引っ掛け」に気づくには,それなりの英語力が必要なわけです.「攻略法」とか「テクニック」とか「ストラトジー」とか呼ばれているものもそうです. たとえば,「Part 2では,最初の数語に注意しろ」とかいう攻略法があるみたいですが,一生懸命聴いても最初の数語を聞き取るリスニング力がもともとない人は役にたたないわけです. Part 3, Part 4では,リスニングが始まる前に設問3問(場合によってはそれ以上? ぼくはできないですけど)を読んでおく,という「先読み」を実施するのも,実は設問をさっと読めないと使えないわけです.これはぼくがいろいろな受講生に出会った中で感じるのですが,昔多かった(らしい)「結構難しい文の読み書きは受験英語で読めるけど,聞き取りや実用英語は苦手」というタイプの人はできるかもしれませんが,いまの10台,20台あたりの人たちの中には,「英語の音にはそれほど苦手意識はないけれど,極めて簡単な英文が読めない」という人が少なくありません.後者の人は,「先読み」をしようとしまいと結構設問と選択肢を読むだけでつらいと思います. Part 5で,問われる文法事項は確かに中学校で習うレヴェルのものも少なくありません.ただ,誤解を恐れずにはっきり書いてしまえば,中学3年間で習う文法事項をきちんとマスターしている大学生や社会人がどれだけいるのか,という問題があります.さらに,問われている文法事項がやさしいものでも,語彙力が充分でないと,仮に全部を読まなくて,空所の前後を読むだけでも,正解を判断するのは難しいはずです. Part 7では,前文を読まなくても,必要な情報だけを読むというスキルが必要とされています.されている,と書いたのは,まあ,ぼくが受験したときは,あまりそんなことをしなくてもなんとか時間内にいつも終了しているからです.でも,こういうリーディングスキルを利用するのもそれなりの英語力がないとできません. さて,ここまで読んでもしかすると,みなさんは,ぼくが「スコアに直結するような勉強法をしよう」と考えることを否定している,と考えられるかもしれません.しかし,そうではないのです.また,TOEICは実は,わかりやすい例を出したに過ぎません. ぼくの主張は,「英語力のアップと英語に関した目標の実現は同時に取り組まなければならない」ということです. TOEICでなら,スコアアップに結びつく学習をするのと同時にそれが自分の英語力アップにもつながっていなければならない,ということです.片方だけを追求すると,結局は両方に捨てられることが多いです.このことについては,TOEIC分析の第1人者のヒロ前田さんも言及していたんじゃないかと思います. ただし,このことを実行するのは,思いのほか難しいです.なぜなら,英語がある程度できるようにならないと英語学習の全体像が見えないから,効率的な勉強そのものが見えないからです.そして,「ある程度」というか「かなり」できるようになった上級者は,簡単に攻略法などを使いこなせてしまうので,それが英語学習をはじめたばかりの入門者や初級者にできるものと錯覚します.あるいは,こういう上級者は,かなり時間・お金を英語学習に捧げてきて,かつ英語講師など,英語を常に学習しているような環境にいるので,自分がやってきたことを入門者や初級者が限られた人生の予定時間と財政の中で,同じように投資することを当然と考えている人がいます.どちらの場合も,なかなかうまくいきません.序(ついで)に云えば,英語を道具として使っているような人の多くは,自分の仕事に精一杯で,なかなか後続の英語学習者を助けている暇はありません. さて,そろそろ具体的に効率的な英語学習とはどういうものかということを考えてみたいと思います.解りやすいように,TOEICを中心として例に出しますが,TOFEL,英検などの他の資格試験であろうと,大学受験であろうと,同じだと思います. ①英語の質の問題 効率的な英語学習を行なう上で考えることは,まず英語の質を目標に合わせることです.大学受験の英語,TOEICの英語,TOEFLの英語,日常会話,それぞれ語彙・文法その他,要求されている知識は違います.これを全く考えないと,何でもかんでも英語の知識とあれば蓄えなくてはいけなくなります. TOEICであれば,固有名詞である地名・人名,動・植物の名前を記憶すること,極めて口語的なイディオム・スラングはあまり出題されません.宗教・政治などを含んだ英米文化の知識もあまり必要はありません.個人的に興味があれば,この種の内容を含んだ素材を拒絶する必要はないと思いますが,あまりそういう知識はTOEICの得点力アップには関係ないことは知っておいたほうがいいでしょう. 語彙においては,やや職場や学校など,やや公的要素の強い場所での日常会話やメール・書類などが出題されることが多いので,具体的な要素が強いものを意識して覚える必要があります.大学入試では,抽象性の高い語彙が難単語とされていますが,それらを覚えても対応できないことがあると思います. ②スキルの問題 TOEIC-SWではない,いわゆる普通のTOEICテストは,マークシートによるリスニング・リーディングのテストです.だから,スペルを正確に綴れるようになることに労力・時間を指す必要はあまりないといえます.ある単語をきちんと綴れる暇があれば,正しい発音をしっかり頭にインプットすることの方が大事です.ここでは,多くは触れませんが,その作業の際は声をだすことはスピーキング能力が評価されないからと云って,無駄ではありません. リーディングですが,難しい文章を細かくSVなどの構文分析をテキストに書き込んで,頭の中に和訳が流れるような読み方は通用しません.ざっと大意を外さないような読み方ができるようにならなければいけません. ③テストそのものに関する問題 その他,出題形式がどういう風になっているか把握しないと,時間配分で失敗します.攻略法などもここに含まれます.ただし,実際に攻略法が使えるか充分に練習しないとたぶん,使えない文法知識と一緒で失敗しますよ. ①②③を踏まえて,きちんと英語学習をすれば,必ず結果はでます.TOEICなら目標スコアはクリアーできるでしょう.ただし,こう書くと,絶対そんなことない,という人が出てくるはずです.なぜ,そういうことになるのかについて丁寧に考えて見ます. (1)運が悪かった TOEICの場合,マークシートなので,適当に塗った場所がどれほど正解するかは運命に左右されます.運が悪いと前回より学習を重ねたにも関わらず点数が下がったとかいうことがあっても不思議ではありません. また,自分が勉強した知識がたまたまあまり出題されなかったということもないとは云えません.それも運が悪かったとしか云えないです. ただ,これについては,複数回受験していれば,必ず,自分の実力以上の点数にめぐり合うのでそれほど心配する必要はありません. (2)勉強方法が自分に合っていなかった これもあります.時々,自分の実力に合っていない難しいことを学習してしまうことがあります.目標に照準を合わせるのはいいのですが,TOEICの点数が250あたりの人が,模試形式の問題集のPart 3, Part 4の練習をいたずらにしても失敗するだけです.簡単な基本構文・文法を覚えながら,そのレヴェルの短めの音声素材を聴き取れるようになる練習をするのが先です. ただ,(1)(2)よりも圧倒的に多いのはこれです. (3)一貫した学習を継続できなかった 世の中にはいろいろな英語学習法があります.大概の場合,長所も欠点も含んでいるのですが,よほど奇特な方法でない限りある程度の成果は出ます.でないのは,1つの方法でやると決めたのに,それをきちんと一定期間続けられないからです.以前にも書きましたが,英語学習(本当は学習全般だと思いますが)においては,ブレないというのは非常に大事なことです. さて,(1)(2)(3)のようなことが起こるのは,実は学習者のせいばかりとは云えません.ここでもし,あなたが,英語上級者で英語講師,教材製作者など,学習者をサポートする側の立場にいらっしゃる方が読んでくださっていたら,やめないで続けて読んでくれるとうれしいです.実は,この記事は,半分そういう人たちのために書いたものです. 最初の方に書いたことにつながるのですが,上(↑)(1)(2)(3)のようなことが起こるのは,学習者に,TOEICのスコアというような実際上の目標のほかに英語力についての目標が設定されていないからなのです. 例えば,TOEIC730を目指す学習者がいたとします.当然,このスコアは,この学習者の目標です.しかし,スコアそのものを目標にしても学習はスムーズにできません.だから,730というスコアをとるのに必要な英語力はどのようなもので,それはどのようにして身につければいいのかが解っていれば,ブレずに同じ学習を辛抱強く続けていれば,充分な実力を身につけるはずです.仮に1回のテストで結果がでなくても,力がついている感触があればそれほどがっかりすることもありません.TOEICは年に何回も受験できるのですから,パスするはずなのです.逆に,それが解らないと,やはり学習は空回りします. 繰り返し書きますが,すべての英語学習者には,その人の人生にとって必要なObjectivesとは別に,それを達成する上でのLanguage Objectivesが必要な訳です.それを設定する手助けをするのが,英語講師だったり,学習アドヴァイザーの役割じゃないんですかね. ぼくは,まだ未熟なので,TOEICの大まかな点数に相当する英語力はどのようなもので,どのように身につけるかは,少しずつ始めたばかりです.今後も受験を続けてもっと正確なことを云えるようになろうと思います.ぼく自身は,(↑)に①英語の質と書いた部分はスペシャリストには敵(かな)わないので,②のマクロ的なスキル分析に関心があります.徐々に解ってきたら,またそのことについて記事を書きたいと思います.ただ,繰り返しますが,本当はTOEICはあくまで1例なんですけどね…… 今回は久しぶりにかなりの長文記事になってしまいましたが,最初に書こうと思っていたことの60%ぐらいしか書けませんでした.残りについては今度にします.最後までおつきあいして読んでくださった人に感謝します.